企業不正に関するニュース : Corporate Fraud News

世界中の企業犯罪や非倫理的な行為を追いかけます

ソフトバンクの幹部、物議を醸したワイヤカード取引の利益が消失

 Wirecardの株価が暴落したことで、ソフトバンクグループの幹部とアブダビソブリン・ウェルス・ファンドが当初得るはずだった利益の多くを消失させたという。英紙ファイナンシャルタイムズが報じた。

https://www.ft.com/content/b8eec9d0-0c85-467d-8cb1-467ad87adced


ドイツ最大のフィンテック企業のWirecardは、先週、19億ユーロもの現金が同社の貸借対照表に存在しないという事実を公表したため、株価が暴落している。Wirecardの株式は3日間の取引で80%以上暴落しており、格付けはジャンク債扱い、銀行団からの融資に奔走する自体となっている。

 

corporate-fraud.hatenablog.com

 ソフトバンクグループ傘下のソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズは昨年、転換社債を通じた Wirecard への 9 億ユーロの投資を実行していた。

これはフィナンシャル・タイムズ紙の一連の調査報道でWirecard社に対して不適切な会計慣行の疑念が高まった後に行われた取引だった。投資と同時に、ソフトバンクは2019年4月にワイヤーカードとの「戦略的協力協定」を締結すると発表し、世界で最も強力なテクノロジー投資家の1人がドイツの決済会社と深いビジネス関係を築き、同社株への信頼感を高める効果をもたらした。

corporate-fraud.hatenablog.com

  

しかし、ソフトバンクがワイヤカードとの戦略的提携に正式に署名した翌日には裏で同社の子会社のSBIAが決済会社の株式と交換可能な新規債券の売却することで、ドイツの決済会社へのポジションを解消した。クレディ・スイスは、9 億ユーロのこの債券を幅広い投資家グループに売却した。これにより、SBIA は実質的に、自己資金を 1 セントも投入することなくwirecardに資金を供給することができ、同時に数千万ドルの先行投資利益を得ることができた。
また、4月に投資条件が決定されて以来、Wirecardの株式が大幅に上昇したことで、SBIAは当時4億5,000万ユーロ相当の株式へのエクスポージャーを維持しつつ、一定の株価上限まではさらに大きな株式を保有して利益を得ることさえ可能となった。
Wirecardは、この取引でえた資金を3億4,000万ユーロを負債の返済に充てる一方で、2億ユーロを株式の買い戻しと株価のさらなる上昇に充てたという。調達した9億ユーロの残りは、同社が「革新的な決済および金融サービス」と呼ぶものへの投資に充当された。

www.nikkei.com


いわゆる「仕組まれた株式」取引は、元ドイツ銀行のトレーダーであり、ラジーヴ・ミスラの側近でもあるアクシャイ・ナヘタ氏の発案によるもので、彼もまたドイツ銀行に勤務し、現在はロンドンのビジョン・ファンドを率いている。
当時、ソフトバンクの幹部がフィナンシャル・タイムズ紙に語ったところによると、ワイヤーカードの取引は、一見問題のある企業に高度に仕組み化された投資を行い、その評判から利益を得るというスキームだ。これはウォーレン・バフェットに触発されたものだったとのこと。
しかし、この投資はソフトバンクが出資したのではなく、ミスラ氏やナヘタ氏をはじめとする日本のグループ社員やアブダビソブリン・ウェルス・ファンド「ムバダラ」が出資したものだった。

 

木曜日にwirecardが現金が存在しない事実を初めて明らかにしたタイミングで、ナヘタ氏はWirecardの監査法人であるEYをTwitter上で避難した。


SBIAファンドは現在、ワイヤカード取引で計上できたであろう数億ユーロの利益を逃すことになりそうだが、昨年実施した金融工学的エンジニアリングにより、当初の9億ユーロの投資を完全に保護することはできそうだという。


その代わりに、クレディ・スイスの顧客は巨額の損失を被っており、クレディ・スイスが投資家に売却した交換可能債券は月曜日にユーロに対して13セントの価格で取引されている。