企業不正に関するニュース : Corporate Fraud News

世界中の企業犯罪や非倫理的な行為を追いかけます

ドイツ最大のフィンテック企業Wirecard、英ファイナンシャルタイムズと全面戦争へ

背景

イギリスの経済紙、ファイナンシャルタイムズは2015年ごろから断続的にWirecardの会計不正問題について報じてきた。しかしWirecardは不正を一向に認めることはなく、ファイナンシャルタイムズ紙の報道は誤りであるという立場をとっていた。事態は今年になって急転する。Wirecardはファイナンシャルタイムズを相手取り、訴訟を提起したのだ。同社はFT紙の記者が空売りファンドと結託し不正に株価を下落させたと主張。ドイツ当局もWirecardの訴えを受けて調査を開始した。FTは外部の法律事務所に調査を依頼し、調査報道に当たっている記者が訴えに該当するような不正を働いたかどうかを調査した。第三者の法律事務所はFTの記者の不正の証拠はなかったと結論づけた。そしてFTはこうしたWirecardの挑戦的な態度にひるむことはなかった。10月になり新たにWirecardが会計不正を実施した証拠を大量のデータとともに公開したのだ。公開された会計データはWirecard社がすでに潰れた会社や実存するがwirecardとの取引を明確に否定した会社との間の大量の取引記録など実存性を強く疑うような取引記録の数々だった。報道をうけてWirecardの株価は大幅に下落した。Wirecardは記事公開後に出された声明で、公開されたデータの真偽については暗黙的に肯定しつつ、FTがそのデータをもとに出した結論のみを否定した。すでに存続してない会社や実存しているがwirecardとの取引関係を否定した会社との取引記録がある理由については、そうした取引社名は単なるエイリアスであり、実態のある会社名と取引は行われていると反論したのだ。相当苦しい反論だ。なぜ過去に存在した会社をわざわざエイリアスとして使う必要があるのか合理的な説明がまったくできないだろう。報道を受けて同社への市場の目は今後一層厳しくなると予想される。同社は疑惑から本当に逃げ切れるのか?見ものだ。

 

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