Wirecardを担当するミュンヘン地方裁判所に提出された報告書によると同社の破産管財人は、ミュンヘン第一地方裁判所において、旧ワイヤカード管理委員会が英国の新聞社ファイナンシャルタイムズ(FT)を相手に提起した損害賠償請求を継続する意思はないという。ファイナンシャルタイムズは「House of Wirecard」と題するシリーズを展開、同社の会計不正疑惑に関して数年間にわたり調査報道を続けてきた。そうした調査報道にたいして反発したwirecardで長年CEOを務めてきたマルクス・ブラウン氏と経営委員会の同僚であるヤン・マルサレック氏は、昨年ファイナンシャルタイムズに対して訴訟を提起していた。実際はFTの報道の通りWirecard社の不正は事実だった。このことを受けて同社の破産管財人は訴訟の継続意思がないことを表明した形だ。
またWirecardの倒産報告書の第15章(XV)ではこの報道に当たったジャーナリストにたいする敬意を示した文章が記述されている。同報告書によるとWirecard社の不正が公になったことは、FTを代表としたジャーナリストの調査報道が「決定的に」貢献していたという。債務超過管理人のマイケル・ジャッフェ氏は、何よりも英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)とその記者ダン・マクルム氏、ステファニア・パルマ氏を称賛している。この二人の調査報道記者は何年もの間、「House of Wirecard」シリーズで、これまで「ドイツでは見たことも想像もしたこともない」経済的な不正行為を綿密に、そして方法論的に描写してきた。このようにして、マクラムとパルマの貢献は、ドイツの司法制度に正式に記録された。
WirecardのもとCEOを務めてきたマルクス・ブラウン氏と経営委員会は、Wirecardに対する調査や告発から注目を逸らすために、FT紙や他のメディアを相手に裁判を起こしただけでなく、ドイツの金融監督当局Bafinも動かした。Bafinは、2人のFT記者を刑事告発せざるを得ないという圧力をうけ、操作を開始したのだ。FTがワイヤーカードの株価下落で日陰の証券取引所の投機家が大儲けするのを助けた疑いで ミュンヘン第一検察庁はこれを機に、2019年春にマクラムとパルマの捜査を開始していた。検察側の操作が打ち切られたかはまだはっきりしていない。
https://www.sueddeutsche.de/wirtschaft/wirecard-insolvenz-ft-ermittlungen-1.5013093