企業不正に関するニュース : Corporate Fraud News

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Wirecard、KPMG特別監査レポートでも疑惑は晴れず、株価は大幅に下落

ドイツのフィンテック企業の株価が大暴落

ドイツ銀行と同程度の時価総額をもつドイツのオンライン決済会社Wirecardが揺れている。イギリスの経済紙であるファイナンシャルタイムズによる2年以上にわたる会計不正疑惑の追求に対する潔白の証明に失敗するのではないかという不安が市場関係者の間で伝わり、同社の株価は一時26.1%下落した。Wirecardはミュンヘン近郊のアッシュハイムに本社を置く決済会社でDax30にも入るドイツを代表するフィンテック企業。同社はドイツを代表するスタートアップ企業としてもてはやされており、ソフトバンクも転換社債などに投資していた

KPMG unable to verify Wirecard’s third-party profits

FTの疑惑払拭を狙ったKPMG特別監査レポートでも疑惑を払拭できず

英国の日刊紙「フィナンシャル・タイムズ」は、Wirecard社の会計不正に関する疑惑を何年も前から告発しており、Wirecardは昨年10月にこれらの告発を一挙に晴らすためにKPMGを監査役として特別報告書を作成すると発表していた。今週の火曜日、KPMGの報告が公開されたがその中身は投資家をがっかりさせるものだった。59ページにわたる同報告書には結局、疑惑の中心となった問題に関してはなんら潔白を晴らすような新事実を示すことができなかったためだ。KPMGは報告書によると「Wirecard AGは、調査中にKPMGが要求した文書の一部を提供しなかったり、要求されてから数ヶ月後まで提供しなかったりしたため、調査全体が遅れてしまいました。さらに、文書やITシステムへのアクセスが失われていたため、調査の個々のステップで実施することができなかったり、あるいは「本来意図した方法で」実施されなかった。提出された書類についても「真偽の確認ができない電子コピーがほとんど」だったと述べており、疑惑の会計処理に関しては不正がなかったという証拠をみつけることも、「不正があったという証拠をみつけることもできなかった」と結論づけた。

要求した書類が何ヶ月も遅延、提出されないものも

KPMGの報告書によるとWirecardが同社の要求した書類の納品を数ヶ月間遅らせたり、全く納品しなかったり、主要な従業員との面談の約束を何度か延期したことなど、調査の円滑な実施を妨害するような行為があったという。必要なITシステムへのアクセスも拒否され、書類は原本ではなくコピーでしか納品されなかったという。さらに、監査にとって不可欠なWirecardの主要なビジネスパートナーの一部がデータの公開を拒否したという。

フィナンシャル・タイムズが提起した4つの疑惑

・Wirecardは、「Third Party Acquiring」(TPA)において、架空の顧客関係を通じて架空の売上高を計上したのではないかという点。Wirecardが外部パートナー企業を経由して処理した支払いで、これらの支払いによる収益は、ドバイやアイルランドのワイヤーカード会社を経由したとされるが、FTの調査によると実態が本当にあったかどうかに強い疑義が示されている。

・ワイヤーカードは、顧客からの支払いが決済されるまでの間、顧客からの支払いを延長することで、加盟店に信用を与えます。Wirecardは、これらの加盟店のキャッシング・アドバンス取引を誤って計上したという疑惑。

・Wirecardは、循環エントリーやバックデート注文により、シンガポールでの売上高を過大評価していた。

・Wirecardは、インドの決済処理業者を買収する際に、過剰な買収価格を支払ったという疑惑。誰がその恩恵を受けたのかは不明。

資料

KPMGの報告書